三話 氷の国と文字の魔法
桃次郎は ・・・
氷の国を目指して ・・・
北へ北へと、旅を続けています。
鉄鬼が持っていると言われている ・・・
氷の雫を持ち帰る為に ・・・
どれだけの時が過ぎたのか ・・・
周りの空気が冷たくなり、雪が降り始めました。
それでも ・・・
桃次郎は、凍りつく様な寒さの中 ・・・
雪で凍りついた道を、ひたすら歩いています。
桃次郎の ・・・
お腰に付けた、綿の袋がユラユラ揺れています。
ユラ ユラ ユラ ユラ
針は、目を覚ますと ・・・
ユラ ユラ ユラ ユラ
自分が袋の中で、揺れているのに気が付きました。
おまけに、寒さで体が震えています。
慌てて袋から、顔を出して見て ・・・びっくり!
周りは、真っ白な雪景色です。
ぶるっ!
寒さで、体が凍ります。
慌てて袋に、顔を引っ込めます。
次に、待ち針が ・・・
そーと顔を出し、空気の冷たさに、びっくりして引っ込みます。
指ぬきも ・・・鋏も ・・・
顔を出し、寒くて慌てて袋に中に戻ります。
最後に糸が顔を出し ・・・
周りを見てキョロキョロしていると ・・・
ドシ~ン! ズボ!
五人は、袋のまま ・・・
雪の中に放り出されてしまいました。
周りを見回すと ・・・
きび団子をくれた少年が、倒れていました。
五人は ・・・
寒さも忘れて、慌てて袋から飛び出して行きました。
桃次郎は ・・・
寒さで体がこわばり、動く事が出来なくなり ・・・
倒れてしまったのです。
このままでは ・・・
桃次郎は、凍りついてしまいます。
困っている五人の目の前に ・・・
突然! 綿の花が現れました。
そして ・・・
綿の花は、糸になり ・・・布になり ・・・
ふわふ~わと、五人の前に落ちて来ました。
五人は、びっくりして顔を見合すと ・・・
急いで桃次郎に着せる はんてん を、
力を合わせて作り始めました。
しかし ・・・
はんてんを作るには、綿が足りません。
と、思った瞬間 ・・・
どさーっ!
上から沢山の綿が、落ちて来ました。
五人は、綿の山に埋もれてしまいました。
桃次郎は ・・・
元気いっぱいで、氷の雫を目指して歩いています。
針と 待ち針と 指ぬきと 鋏と 糸が ・・・
力を合わせて作ってくれた、
暖かい はんてん を着て ・・・
ユラ ユラ ユラ ユラ
五人は、揺られていました。
ユラ ユラ ユラ ユラ
桃次郎の、お腰に付けた綿の袋の中で ・・・
五人は ・・・
次々と起こる不思議な出来事に、びっくりしています。
綿の花が現れてから ・・・
思った事が、目の前に現れるのです。
お腹がすいて、おにぎりが食べたいと思うと ・・・
おにぎりが現れ ・・・
温かいお茶が飲みたいと思うと ・・・
湯のみから、湯気の上がったお茶が現れるのです。
なにより、一番驚いているのは ・・・
五人が、なぜ? ここに居るのかと ・・・?
不思議に思っているうちに ・・・
いつの間にか、寝てしまいました。
ポカ ポカ ポカ ポカ
針が、次に目を覚ました時 ・・・
ポカ ポカ ポカ ポカ
凍える様な寒さが、消えていました。
針は、袋から顔を出して周りを見回します。
凍りついていた氷が、解けだしていたのです。
「なぜ ・・・?」と、思っているうちに ・・・
針の目の前に、突然、氷の矢が飛んで来ました。
ビュン ビュン ビュン ビュン
次々と、飛んできます。
ビュン ビュン ビュン ビュン
「うわーっ! 刺さる」 と、思った瞬間 ・・・
桃次郎が、腰の剣を抜いて払いのけてくれました。
針は ・・・
寒さではなく、今度は怖さで震えています。
五人は ・・・
桃次郎の綿の袋の中に隠れて、震えていました。
お裁縫箱の国は平和で ・・・
お裁縫箱の国の人々は、戦う事を知らなかったのです。
氷の矢は、次々と飛んできます。
このままでは ・・・
桃次郎一人では、負けてしまいます。
梵念は ・・・
疑問に思って巻物を閉じました。
「氷の国の真ん中に向かっているのに ・・・
なぜ ・・・? 氷が解けだすんだ ・・・?」
梵念は ・・・
仏殿の奥の間の、沢山の書物の中から ・・・
鉄鬼に関連のある本を、急いで探しました。
「あった、あった。」
梵念は、本を開いて読み始めました。
・・・年、科学の国の天才的科学者が ・・・
生活の利便性を求め ・・・鉄鬼を作り出した ・・・
科学技術の発達は ・・・生活に大きな影響を及ぼし ・・・
・・・・・
しかし ・・・真っ赤になって、 鉄鬼が暴れ出すと ・・・
誰も止める事が出来なかった ・・・
・・・・・
誰も訪れる事のない ・・・氷の国へ ・・・
冷やして眠らせるしか ・・・方法がなかった ・・・
・・・・・
科学者達は ・・・ 誰も近寄らせない為に ・・・
近づく者がいると ・・・防御するプログラムを ・・・
鉄鬼の ・・・ ・・・ セットした ・・・
梵念は、本を置くと ・・・
「鉄鬼は、高熱を発するのか ・・・?」
梵念は、考えます。
「氷の雫は ・・・ 何処に ・・・?」
梵念は、心を決めると ・・・
「とりあえず ・・・ 桃次郎を助けないと ・・・」
針は、鋼鉄の如く強く ・・・待ち針は、光の矢の如く早く ・・・
指ぬきは、岩をも砕く力を ・・・鋏は、手裏剣の如く鋭さを ・・・
そして ・・・糸の前に剣が現れ ・・・
蝶の如く舞い、剣を巧みに使いこなし ・・・
桃次郎を、助けるのであった ・・・
四話 綿の袋と春の嵐 へ ・・・ 続く