四話 金の果実と火炎魔大王
まだ・・・誰もが寝静まっている頃・・・
真っ直ぐな野菜畑が、薄墨色から薄紅色に変わる頃
朝ぼらけが、夜明けを告げに現れます。
夜明け前の一時を楽しむ様に、自由に飛び回り
朝もやの中を走り抜けます。
そして・・・朝日の訪れと共に、薄紅色に染まった
もやが流れ、朝ぼらけも儚く消えてしまいます。
変わりに・・・透明な朝の光が、真っ直ぐな野菜畑を包みます。
いつも通り、ものさし爺さんは、真っ直ぐな野菜を収穫しに
元気よく畑にやって来ました。
すると・・・
ピカ ピカ ピカ ピカ
真っ直ぐな野菜畑の真ん中で、金色に輝く光が見えます。
ピカ ピカ ピカ ピカ
「なんじゃ~?」
不思議に思って、ものさし爺さんは金色の光の方へ・・・
ピカ ピカ ピカ ピカ
トウモロコシ畑を越え・・・トマト畑を越え・・・
カボチャ畑を越えて、金色の光の方へ近づいて行きます。
ピカ ピカ ピカ ピカ
すると・・・
「オーッ!」
ものさし爺さんの大きな絶叫が、辺り一面に響き渡りました。
勝手に住み着いて居る声の妖精ボイスは
ものさし爺さんの大きな声で、目を覚まします。
「まさか・・・?」
そして・・・
直ぐに光のリングを作ると、急いで飛び込み・・・
お爺さんの所へ・・・
「ものさし爺さ~ん! どうしたの~?」
お裁縫箱の家から、ミロロを先頭に、姉のマロロ、妹のモロロ
双子の弟のムロロとメロロ・・・
マミムメモ兄弟が、慌てて走って来ます。
トウモロコシ畑を越え・・・トマト畑を越え・・・
カボチャ畑を越えて・・・ものさし爺さんの所へ、順番に走って来ます。
そして・・・
マロロが 「まぁ~!」
ミロロが 「えーっ?」
ムロロが 「おぅー!」
メロロが 「あひゃ~!」
最後に到着したモロロが 「わぁー! 何~に、これ?」
先に来ていた声の妖精ボイスは、空中のリングの中から ・・・
「なぜ・・・? 昨日までは、光っていなかったのに・・・?」
お隣の巻尺爺さんも、ものさし爺さんの声を聞きつけ
一大事とばかりに、マルマルお化けのマールと一緒に・・・
トウモロコシ畑を越え・・・トマト畑を越え・・・
カボチャ畑を越えて、転がる様に丸くなって走って来ます。
そして・・・
「何じゃ~? こんなの見たことないぞ~!」
とても、驚いて言いました。
「マール! お前は見たことあるか~? マール?
あれ~? マール? マールがいない・・・?」
一方・・・ココとリリは、連日の冒険でクタクタに疲れて
ぐっすり寝て居る所でした。
花の妖精のリリは、カボチャの花に魔法を掛けて
花の揺り籠のベッドを作ります。
そよ風の妖精のココは、寝心地の良い微風をおこし
魔法のウエーブを掛けて、花の揺り籠を揺らします。
いい気持ちで、カボチャの花の揺り籠に
揺られながら寝ていたココとリリも
大きな叫び声にびっくりして目を覚まします。
「ふぁ~! 何かしら・・・?」
ココが眠そうに言うと・・・
「ふぁ~あ◯」
リリも大きなあくびをします。
全く・・・呑気な二人です。
すると・・・
ドシィ~ン!!
カボチャの花の揺り籠に、何かが、ぶつかって来ました。
「きゃ~っ!」
二人は、悲鳴を上げます。
揺りかごが大きく揺れます。
すると・・・
ドシィ~ン!!!
また、何かが、ぶつかって来ました。
「何なの~?」
真っ直ぐお化けのチョクチョクも、ものさし爺さんの大きな声にびっくり!
夜の間、闇の国に戻っていたチョクチョクは
急いでお爺さんの所へ向かいます。
走りながら周りの空気を集め、闇の扉の黒い光のリングを作り
一気に越えます。
そして・・・声の聞こえる方へ全速力で走ります。
トウモロコシ畑を越え・・・トマト畑を越え・・・
カボチャ畑を・・・
ビヨヨヨヨ~ン!!
「あれ~っ・・・?」
カボチャ畑を越えようとしたら、透明な空気のバリアーに
弾き飛ばされてしまいました。
「痛たたぁ~!」
チョクチョクは、カボチャ畑に尻餅をついてしまいました。
何が起こったのか分かりません。
ただ・・・収穫したばかりのカボチャの山に埋もれています。
そして・・・
隣を見ると、マルマルお化けのマールも、同じ様に埋もれて
キョロキョロしています。
闇の国の妖魔には、光の国の魔法のウエーブを
破る力はなかったのです。
花の妖精のリリが、カボチャの花に掛けた魔法と
そよ風の妖精のココが掛けた、光の国のウエーブのバリアーに
チョクチョクとマールは、弾き飛ばされてしまったのです。
ココとリリは、大慌て・・・
直ぐに魔法のウエーブを解くと、大急ぎで
カボチャの葉っぱの陰に隠れます。
しかし・・・遅かったのです。
チョクチョクは、見逃しませんでした。
「誰・・・?」
不思議に思っていると・・・
また、ものさし爺さんの大きな声が・・・
「何で、着かないんじゃ~?」
悩んでいる暇はありません。
チョクチョクとマールは、また、走り始めます。
今度は、カボチャ畑をすんなり越える事が出来ました。
ココとリリも、見つからない様に後を追います。
「お爺さん! どうしたの~? うわぁ~!」
チョクチョクは、大きな声を上げます。
ココとリリも・・・
「あっ!」
思わず、大きな声を出してしまいそうになって
両手で押さえて堪えます。
「まぶし~い!」
マールもびっくりして、目をパチパチ!!
そこには、目を覆うばかりに、眩しく金色に輝いた美しい果実が
竹竿の先に吊るされて、光り輝いていました。
お裁縫箱の国の人々も、闇の国の妖魔達も
初めて見る金の果実の輝きに、眩しくて目を細めます。
「でも・・・何で竹竿に・・・?」
チョクチョクが不思議に思っていると・・・
カチ カチ カチ カチ
ものさし爺さんが、火打石を鳴らしています。
カチ カチ カチ カチ
火の子を呼んでいるのです。
カチ カチ カチ カチ
「お~い! ピッピ!!」
ムロロとメロロが大きな声で叫びます。
カチ カチ カチ カチ
「早く出ておいで~!」
モロロも叫びます。
どうやら・・・ものさし爺さん・・・
金の果実がとても固いので、火を熾して
柔らかくしようとしているのです。
「何をしているのかしら~?」
ココが心配しています。
「ココ! 金の果実が光っているということは・・・?
もうすぐ卵が産まれるのかしら・・・?」
リリも、ハラハラ心配しながら様子を見守ります。
「きっと そうよ・・・どうするの・・・・?」
二人は、オロオロするばかりで、何の役にも立ちません。
カチ カチ カチ カチ
「ピッピー!」
みんなで、大きな声で火の子を呼びます。
カチ カチ カチ カチ
「出ておいで~!」
でも・・・呼んでも、呼んでも出て来ません。
いつもは、呼べば直ぐに遊びに来る、火の子のピッピは
今日は、出て来ません。
すると・・・
モク モク モク モク
辺りが何だか、薄暗くなって来ました。
モク モク モク モク
金の果実を包み込む様に、灰色の煙が立ち込めます。
モク モク モク モク
煙が、だんだん黒色に変わって来ました。
モク モク モク モク
黒い煙は、完全に金の果実を包み込みます。
ココとリリも、思わぬ展開に、息を潜めてじっとしています。
すると・・・
煙の中から、目玉がギョロリ!!
「キャーッ!」
あまりの恐ろしさに、ココとリリは気絶をしてしまいました。
もうすぐ・・・金の卵が産まれそうなのに・・・
とっても・・・頼りない二人です。
ミロロ達も、あまりの恐怖に動く事が出来ません。
黒い煙が、旋回を始めました。
そして・・・一気に火を噴き、大きな渦を巻いて上昇し始めました。
炎の竜巻が、天まで届くと・・・
真っ赤な火炎を纏う、龍神が現れました。
「火炎龍じゃ~!」
ものさし爺さんが叫びます。
「大王様!」
チョクチョクも、大きな声で叫びます。
火炎の威力で、すべてを焼き尽くすと言われている
闇の国の大王、火炎魔大王です。
五話 金の卵と闇の国の妖魔達へ・・・続く・・・