二十話 木っ端天狗と文殊の木4
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右の国の風船雲は ・・・
ふわふわ、ふわふわ日を追うごとに増え続けています。
なので、右の国を囲む木の塀も ・・・
どんどん、どんどん大きく成長して行きました。
そして、ある日 ・・・
とうとう、空の上まで届いてしまいました。
色とりどりの風船雲は、ふわふわ雲に交ざって
広~い大空に広がって行きます。
ふわふわ ・・・ ふわふわ ・・・
どんどん ・・・ どんどん ・・・
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「お空に広がる、色とりどりの風船雲を思い描いていたら ・・・」
「思い描いていたら ・・・ どうしたの? マチバ?」
と、カタンが聞きます。
「ほら話を思いついたわ!」
そう言うと ・・・マチバは、空を見て話し始めました。
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遠~い南の島に、入道雲の子どものモコモコがいました。
いつも空に浮かんで、ぷかぷか浮いて遊んでいました。
モコモコは、南の島の大きな空が、大好きでした。
夏になると、南の海の暖かい空気をたくさん吸って、
ぐんぐん大きくなり、飛行機になったり、お魚になったり ・・・
変身するのを、楽しみにしていました。
ある年の夏 ・・・
暖かい空気をたくさん吸った、モコモコは、
ぐんぐん、ぐんぐん大きくなり、お空を越えてしまいました。
そして ・・・ 大きくなり過ぎて ・・・
コツン! お月様とぶつかってしまいました。
「痛タタタ・・・」
おでこを、撫でます。
この時に、たくさんの火花が飛び散り、
色とりどりの光り輝く、お星様になりました。
モコモコは ・・・
お星様を集めて、金平糖にして食べました。
おしまい
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「アハハハ・・・ 結局、最後は、食べるんだ!」
ヌッキーが、みんなを見て笑います。
「ほんとだよ! お腹が、すいて来ちゃった!」
アシダとヌクマルも、うなずきます。
すると ・・・
カタンが、言いました。
「じゃあ、その続きを考えたよ!」
と言って、話し始めました。
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モコモコは、お空に浮かぶお星様を集めて
色々な物を作り始めました。
大きな熊さんや小熊、勇ましい獅子 ・・・
可愛いお魚やカニさん、ちょっと怖い蠍 ・・・
お空が、賑やかになって来ました。
すると今度は、お星様を丸めて ・・・
お団子を作り始めました。
水のお団子に火のお団子、木のお団子に土のお団子 ・・・
最後に、金のお団子を作ると ・・・
お空に一列に並べて、長~い串で刺しました。
そして ・・・
大きな口を開けて、パクリと食べてしまいました。
お腹一杯になったモコモコは ・・・
三日月の揺り籠に揺られて、うとうと ・・・
疲れて、眠ってしまいました。
おしまい
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「クスッ! 結局、 最後は食べちゃうのね!」
マチバが、可笑しそうに言います。
「みんな、食べ物の話ばかりだから ・・・
お腹がすいてきちゃった!」
マゼンタが、お腹を押さえながら言うと ・・・
「まあまあの、ほら話じゃな! でも、良かろう ・・・」
と言いながら ・・・
木っ端天狗が、マチバに小さなお椀をくれました。
「食べたい物を、言ってみるがよい!」
木っ端天狗が言います。
マチバは、みんなの顔を見渡すと ・・・
「おにぎりをたくさ~ん」 と、叫びました。
すると ・・・
マチバの手のひらの上に載っていた、
小さなお椀がカタカタ揺れると ・・・
お椀から青い光が輝き始めました。
そして ・・・
小さかったお椀が、大きなお皿になり ・・・
お皿の上には、たくさんのおにぎりが載っていました。
みんなは大喜びで ・・・
おにぎりを美味しそうに食べ始めました。
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ふわふわ ・・・ ふわふわ ・・・
どんどん ・・・ どんどん ・・・
風船雲は、ふわふわ雲に混じって ・・・
広~い大空に、広がって行きます。
空の上では ・・・
デン デン ゴロ ゴロ
虎の皮のふんどしを締めた、雷の神様が ・・・
デン デン ゴロ ゴロ
背中の連太鼓を鳴らしながら ・・・
デン デン ゴロ ゴロ
ご機嫌良く ・・・
デン デン ゴロ ゴロ
酒盛りをして踊りを舞っていましした。
すると ・・・
フワ フワ フワ フワ
ふわふわ雲が近づいて来ます。
フワ フワ フワ フワ
「おや~っ?」 見た事のない雲が ・・・
フワ フワ フワ フワ
漂っているのに気が付きました。
フワ フワ フワ フワ
それも ・・・たくさん、たくさん ・・・
その、見た事のない雲には ・・・
丸い形をした、おへそが付いています。
そのおへそから糸が、垂れています。
もともと ・・・
おへそを取るのが大好きな雷の神様は、大喜びで
糸を引っ張って、おへそを取ろうとしました。
しかし ・・・
固く糸が縛ってあるので、なかなか取れません。
よいしょ! よいしょ!
糸を引っ張ります。
そして ・・・
何回も何回も、力いっぱい引っ張り ・・・
すぽん!
やっと、おへそが取れました。
雷の神様は、大喜びで上機嫌です。
しかし ・・・
それも、つかの間 ・・・
ぷ~ん 。。。◯
今までに嗅いだことのない変な匂いが、漂って来ました。
「うわーっ! ななな何だーっ!」
雷の神様は、びっくり!
☆ ピカーッ ☆
おもわず、稲光を放ってしまいました。
なので ・・・
周りに漂っていた風船雲が、次々と破裂し ・・・
雷の神様は、次々と襲って来る臭いの渦に巻き込まれてしまいました。
「ゴホゴホ! ばか者ーっ! 誰が作ったんだーっ!」
雷の神様は、大層怒って ・・・
臭いが漂ってこないように、右の国の空まで伸びて来た
木の塀に、厚い雲で蓋をしてしまいました。
右の国の ・・・
誰も嗅いだ事のない匂いが消えるまでには ・・・
数十年 ・・・ もしくは、数百年かかるかもしれません。
右の国は ・・・
誰も住めない国になってしまいました。
おしまい
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「三回目の分かれ道の時には、人々は
左の国を選んだって事かな?」
ヌッキーが、おにぎりを両手に持って、モグモグしながら聞きます。
「そうよ! 誰も右の国で、暮らしたいと思わないわ。」
3個目のおにぎりを食べながら、マチバが言います。
「王様の考え方一つで、違う国になっちゃうね!」
カタンも美味しそうに、おにぎりを頬張って言います。
「ホホホッ! お腹が膨れたかね?」
木っ端天狗が、近くの細い枝に止まって声を掛けて来ます。
「とっても美味しいわ! ありがとう。
この不思議なお椀は、貰っても良いのね?」
マチバが、聞きます。
「良いじゃろう! まあまあのほらじゃがな。」
そう言いながら、木っ端天狗は、持っている杖を振りました。
杖から青い光が二つ現れました。
一つは、ヌッキーの手のひらに舞い降りると ・・・
欲しいものが釣れる、釣り糸が現れました。
もう一つは、カタンの手のひらに舞い降り ・・・
なりたいものに変身できる団扇が現れました。
「大切にするが良い。 文殊の木の宝物じゃ!」
木っ端天狗は、枝から枝へ飛び移りながら言いました。
そして ・・・
「そこの小坊主どのは、どうじゃな?
ほらは、思いついたかな ・・・?」
くるりと回りながら言いました。
梵念は、目を輝かせて ・・・
「もちろん!」
と、木っ端天狗を見て話し始めました。
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昔々、おとうふ山に一匹の小猿がいました。
天狗のように鼻が高く、尻尾の長いその小猿は ・・・
いつも、枝から枝へ飛び移り、
自由に空中を飛び回って遊んでいました。
ある時 ・・・
その小猿は、山の主と呼ばれている、大きな大きな猿に出会いました。
いつも一人で遊んでいた小猿は、嬉しくて一緒に遊ぶようになりました。
しかし ・・・
大猿は、とても悪戯者で、お裁縫箱の国の人々を困らせていました。
留守家に入って、食べ物を食べたり ・・・
畑を駆け回って、植えた苗を枯らせてしまったり ・・・
とっても、困った猿でした。
小猿は、悪戯はしません。
大猿と一緒に遊びたいだけなのです。
しかし ・・・
いつも大猿と一緒にいる小猿も、人々から悪戯者と思われていました。
ある時、大猿は ・・・
お裁縫箱の国へ遊びに来る、闇の国の人々に交じって
闇の国へ付いて行き、あちこちで悪戯をして大暴れをしてしまいました。
そして ・・・
一番してはいけない事を、してしまいました。
闇の国の王様の使い魔が、王様から預かっている
大事な種火を、消してしまったのです。
闇の国は、たちまち真っ黒な暗黒の国になってしまいました。
激怒した、闇の国の王様は ・・・
小猿を剣谷の奥深くにある、誰も来ることがない洞穴の祠に閉じ込めてしまいました。
それも、決して命が絶える事のない、天狗の姿に変えて ・・・
祠には、御札が貼られ ・・・
誰も開けることができないようにされてしまいました。
そして、時が過ぎ ・・・
人々から、猿が悪戯したことも、悪戯猿がいた事も ・・・
忘れ去られていきました。
おしまい
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梵念が話し終わると、みんな ・・・
おにぎりを食べるのも忘れて、顔を見合わせます。
「どういうこと ・・・?」
マチバが、聞きます。
「御札って ・・・?」
カタンも、びっくりして聞きます。
「さすが、小坊主じゃ!」
木っ端天狗が、微笑んで梵念を見ます。
そして ・・・
「最後に、わしからの、ほら話じゃ!」
そう言うと、木っ端天狗が青く輝き始めました。
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大猿と一緒に、祠に閉じ込められてしまった小猿は、
悲しい気持ちで、毎日を過ごしていました。
こんなに暗い場所で、一生を過ごさなければいけないと思うと、涙がこぼれてきました。
すると、ある日 ・・・
ヒラ ヒラ ヒラ ヒラ
小猿の前に ・・・
ヒラ ヒラ ヒラ ヒラ
青い光りに包まれた、蝶が現れ ・・・
ヒラ ヒラ ヒラ ヒラ
幻の木と言われている ・・・
ヒラ ヒラ ヒラ ヒラ
文殊の木が現れました。
そして ・・・
頭の中に、美しい声が聞こえて来ました。
「文殊の木が、実を付けます。
願い事が一つ叶います。 念じなさい。」
そう言うと、幻のように消えて行きました。
小猿は、慌てて願い事を念じました。
願い事は、一つでした。
そして ・・・
時が過ぎ ・・・
気が付いて、周りを見渡すと ・・・
小猿は、おとうふ山のいつも遊んでいた所にいました。
小猿は、嬉しくて、いつものように飛び跳ねました。
しかし ・・・
飛び過ぎて、頭上の枝に頭をぶつけて気絶してしまいました。
自分が、猿から天狗になったことに気が付いていなかったのです。
夢の中で ・・・
文殊菩薩様が現れました。
「小猿よ ・・・ これを与えます。
これから、人々のために尽くしなさい。」
小猿は、目を覚ますと ・・・
手に、木の杖を持っていました。
その木の杖は、知恵の杖と呼ばれるもので、
杖を振ると、その場に合ったものが現れるのでした。
小猿は、それから ・・・
細目に、人々の為に尽くしました。
その小さい天狗の容姿から ・・・
木っ端天狗と人々から、呼ばれるようになりました。
おしまい
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気が付くと、木っ端天狗の姿が消えていました。
みんなで、目を凝らして辺りを捜します。
どこにもいません。
すると ・・・
フワ フワ フワ フワ
青い光に包まれて ・・・
フワ フワ フワ フワ
何かが舞ってきます。
フワ フワ フワ フワ
青い光は、ゆっくりと降りてきます。
フワ フワ フワ フワ
梵念の前まで来ると、光が消え ・・・
姿を隠す事が出来ると言われている
天狗の隠れ蓑が現れました。
すると ・・・
何処かから、声が聞こえます。
「文殊の木の宝物じゃ! 大事に使うことじゃ!
早く友達を助けてあげることじゃな!」
そう言うと、声が小さくなっていきます。
そして、最後に ・・・
「この禍(わざわい)は ・・・
金の光が、もたらしたことじゃ ・・・」
木っ端天狗の声が、聞こえなくなりました。
二十一話 厄病神の閻魔帳と貧乏神のお財布 へ 続く ・・・